桜井充メールマガジン

桜井充メルマガ「診療報酬改定」

2023年12月21日 (木) 19:03
 令和6年度の診療報酬改定が行われ、診療や医療サービスの対価にあてられる本体部分は、0.88のプラス改定となった。財務省としてはかなりのプラスだと思っているようだが、業界からの反応は決して良くない。これで本当に医療現場で働いている人たちの賃上げができるのか疑問である。

 介護報酬改定も行われ、こちらは1.59のプラス改定だった。介護事業者の支出の内訳をみると、65%を人件費が占めている。ここから仮に3%賃上げをしようとすると、65×0.03=1.95となり、もうすでに1.59のプラスでは間に合わない計算になる。

 更に、このまま物価が高騰すれば、賃上げの幅も上げていかなければいけない。介護報酬改定は3年に一度しか行われないため、来年度はこの改定率でなんとかなったとしても、再来年度以降はとても賃上げできるとは思えない。介護職は他の産業よりも給料が安いので人材の流出が続いている。今回の改定では、この流れを止めることは難しいと感じている。

 一方で、今回の改定は1年目と2年目の賃上げ分のみに対応し、3年目の賃上げについては、2年後の状況を見て再算定するという特例が講じられることになっている。こんなことを行うのであれば、医療と同じように2年ごとの改定を行ったほうがいいのではないか。

 政府は、人件費などを抑えて利益をあげることを目指す「コストカット型」の経済からの転換をすると言っているが、このままでは、医療や介護の分野ではコストカット型からの脱却はできないだろう。この診療報酬改定を受けて、実際に賃上げできているかどうかを確認し、問題があれば、来年度の補正予算で措置していかなければと考えている。