桜井充メールマガジン

桜井充メルマガ「大学病院改革」

2023年12月15日 (金) 19:22
 日本の研究力の低下が顕著である。世界各国の論文数は年を経るごとに増えているが、日本の論文数はほぼ横ばいで推移している。この原因の一つが、研究補助員の少なさであると指摘している論文が、英誌ネイチャーに掲載されていた。この点に関しては、私も以前からそう考えていた。

 令和6年度の予算編成が進んでいるが、その中で、大学病院の研究環境の改善に繋げられそうなメニューがあった。文科省の「高度医療人材養成拠点形成事業」である。これは、医師の働き方改革の一貫で、研究補助員を確保することで、臨床研究の機会を拡大しようというものである。

 文科省は当初、120億円の予算を要求していたが、財務省の査定で6億円まで減額されてしまった。そこから、この問題に取り組んでいる渡海紀三朗衆議院議員の尽力で16億円までは増やしたのだが、そこで「なんとかもう少し増額できないか」と私に相談が持ちかけられた。それが先週の金曜日である。

 そこで、この予算で行う事業の内容を刷新したうえで、財務省と改めて折衝することにした。土日をかけて文科省とやりとりを重ね、全ての大学病院を横並びにするのではなく、大学病院ごとに主に基礎研究を行うものと臨床研究を行うものに分け、それぞれの特色を活かした支援を行うように変更した。

 この案を提示すると、財務省から、積算根拠が明確でよくできた案だとお褒めの言葉を頂いたが、予算編成の議論が大詰めを迎えていたこともあり、結局予算は21億円ということになった。

 妥協した形になったが、それでも基礎研究を行う大学には各診療科ごとに1名の研究補助員を配置できるようにしたし、臨床研究を行う大学には研究センターを作ってもらい、そこに数名の研究補助員が配置できるようにした。まだまだ不十分ではあるが、研究体制の第一歩は踏み出せたと感じている。日本の研究が進んでいくように、さらなる体制整備を行っていきたい。